資格名 作業療法士(国家資格・独占業務)
今回は、作業療法士の資格と働き方について、作業療法士のゆきさんに実情を伺います。
作業療法士のゆきと申します。
現在、病院で作業療法士として勤務しています。
4年生大学での課程終了後、国家試験を受験し、資格を取得しました。
よろしくお願いします。
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作業療法士の業務内容
精神や身体に障害のある人たちが、作業を通して精神や身体の機能を回復し、社会復帰を果たしたり、生きがいのある生活が送れるように、指導や援助を行うのが作業療法士の仕事です。
作業、には入浴や食事といった日常生活の動作も含まれますし、手芸などのリハビリテーション的な動作も含まれます。
理学療法士との違い
-
- 理学療法士:基本的な身体機能の回復を図る。
- 作業療法士:日常生活に関わる細かな動作の回復を図る。また、理学療法士と違う点として、そううつ病及び摂食障害など、精神障害の患者さんも対象となります。
作業療法士の試験の合格率・難易度
作業療法士試験の合格率
受験者数 | 合格率 | |
平成25年 | 5,474人 | 86.6% |
平成26年 | 5,324人 | 77.5% |
平成27年 | 6,102人 | 87.6% |
3年平均 | 5,633人 | 83.9% |
試験の難易度
合格率を見るととても高い合格率のため、難易度が低いように思われるかもしれませんが、理学療法士と同じカラクリがあります。
作業療法士も、理学療法士と同様に、作業療法士養成校(大学や専門学校など)を卒業しないと国家試験を受けることができませんが、養成校は、卒業生の合格率を上げるために、国家試験に合格できるまでのレベルに達していないと、進級できなかったり、卒業できなかったりします。
なので、合格率8割というのは、「国家試験に合格できそうと見込まれた人の中の8割」という意味です。
そういう視点でもう一度合格率を見てみると、それがとても高い数字ではないことが分かります。
とはいえ、必死で勉強したのに、なかなか受からない狭き門、では決してなく、真面目に一生懸命頑張った人は、合格できるレベルの試験です。
真面目にコツコツ勉強を積み重ねれば、よっぽど学力が不足している人でない限り、怖がることはありません。
作業療法士試験の受験資格
大学入学資格があるもので、文部科学大臣が指定した学校か、都道府県知事が指定した作業療法士養成施設において、3年以上、作業療法士として必要な知識および技能を習得した者(修業または卒業見込みの者を含む) など
作業療法士試験の内容
一般問題と実地問題に区分して、次の科目について筆記試験を行う。
一般問題
- 解剖学
- 生理学
- 運動学
- 病理学概論
- 臨床心理学
- リハビリテーション医学(リハビリテーション概論を含む)
- 臨床医学大要(人間発達学を含む)
- 作業療法
実地問題
- 運動学
- 臨床心理学
- リハビリテーション医学
- 臨床医学大要(人間発達学を含む)
- 作業療法
試験日
- 筆記:2月下旬
- 口述・実技:2月下旬(展示試験受験者のみ)
受験手数料
- 10,100円
作業療法士資格取得後、実際に稼ぐことができるようになるまでの流れは?
毎年、2~3月にかけて、作業療法士の国家試験が行われます。
専門学校や大学に在学中に、卒業に必要な単位が確定していれば、国家試験の受験ができます。
国家試験の合否が出る時期は毎年3月。学生は、合否がわかる前に、就職試験を先に受けていて、就職先を確保している場合が多いです。
もちろん、就職先が決まっていても、国家試験が不合格であれば、内定が取り消される場合がほとんどです。
学生は、3月に国家試験に合格した後、4月から、作業療法士として働いています。
4月から働き、多くの就職先では3~6ヶ月が試用期間中ですが、給与は、満額貰えます。例えば、月給21万と提示されていれば、4月から21万円貰うことができ、試用期間中だからといって、減額はない場合が多いです。
作業療法士の平均年収
作業療法士は、働く場所で、給与の幅が大きいです。
病院や介護施設で働いた場合、賞与を含めて、年350~420万円位が平均的と思われます。
最近は、株式会社が、訪問リハビリの分野に参入しており、そういった企業では、年収500~550万円位を提示している場所もあります。
(厚生労働省の平成26年度の賃金構造基本統計調査では、理学療法士と作業療法士の平均年収は31.3歳で約390万円です)
私の周りは、病院や施設で働いている人が多いので、年収400万円弱の人が多いです。
独身や夫婦共働きであれば、子どもを育て、食べていくには、困らない給与だと思います。
医療や介護保険に左右される職種なので、今後も平均年収は、変わらないか、下がる可能性はあります。また、大手の企業と年収を比べたり、裕福な生活をしたいと考えると、年収はもの足らないと思うかもしれません。
作業療法士の将来性
作業療法士は、この資格を持って、働いていれば、生活には困らないと思います。
現在の日本は、超高齢社会、今後も高齢人口が増えていきます。日本の政策は、加齢や障害で体が十分に動かせなくなっても、住み慣れた地域で生活を継続できるように、地域資源を活かしたシステムである、地域包括ケアを積極的に行っていきます。
作業療法士の強みは、単に体が動く、動かないといった、身体機能面に着目するだけではなく、高齢者、あるいは障害を持たれた方が、自分の意思でやりたい事を実現する為に、どのような能力、環境資源を使えば良いかを導き出せる事です。
その為、今よりも高齢者や障害を持った方が増える今後の社会でも、作業療法士の需要は、減らないと思います。
作業療法士資格取得後、ステップアップしたり稼ぐようになる為に必要な勉強や行動とは
作業療法士は、各都道府県に、作業療法士の協会が設置されています。
協会が主催する研修会に参加し、条件を満たしていくと、認定作業療法士、専門作業療法士という上位資格が得られます。
少数だと思いますが、就職先によっては、それらの資格で、賞与等に加点がつく場合があります。
また、協会だけでなく、各地で色々な団体が研修会を行っています。
車いす等の福祉用具に専門特化したり、呼吸器や内科の分野のリハビリを勉強し、専門的な資格を得たり、スキルのステップアップの幅は広いです。
その勉強の中で、資格を他にも得ていくと、昇給や賞与に、加点してもらえる場合が多いです。
作業療法士のおすすめ勉強方法
資格を取得し、1年でも早く働きたい場合は、3年制の専門学校をおすすめします。
4年制大学でも、しっかりと学ぶことができるのですが、職人の世界なので、早く現場に出て、現場で学ぶことが多いです。
昔は2年制の専門学校もありましたが、今は最短でも3年制です。また、教育課程上、期間が長く、複数回にわたる実習がありますので、通信教育で試験に合格するための対策を学ぶことはできますが、資格を取得することはできません。
作業療法士の資格の受験を悩んでいる人には、こんな資格もおすすめ
- 言語聴覚士
- 理学療法士
作業療法士の資格と仕事について、おわりに。
高収入を目指したい!という方には、少し合わないかもしれませんが、私のように女性でも、やりがいを持って生涯働くことができ、自分一人でも家族が生活していけるだけのお給料を稼ぐことができる資格です。
手に職をつけて働きたいという方は、良い選択だと思いますよ。